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2012年5月16日


東日本大震災 2012年5月 調査報告(宮城県仙台市・名取市・女川町、福島県いわき市)

東日本大震災により、被害を受けられた皆様や、避難生活を余儀なくされている皆様に、 謹んでお見舞い申し上げます。被災された地域の一日も早い復興を心よりお祈り申し上げます。 インテグラルも、建築業界に関わる一企業として、あらためて日本全体の住宅の耐震化に少しでも 貢献できることを願い、震災1年後の被害地域を2012年5月12、13日に訪れました。 ※参考 2011年3月27日の被災状況調査報告(仙台市) https://www.integral.co.jp/blog/other/2011/04/13-288
▼宮城県仙台市宮城野区 (比較的内陸の場所) 塀などに津波が押し寄せた跡が残っていました。 農地は塩害により使えない状態だといわれており、水田だったと思われる箇所は未だ手付かずの状況のようでした。
▼宮城県仙台市若林区荒浜 (海岸線沿いの住宅街) 津波による瓦礫はほぼ集積所に集められていましたが、上部構造が流され基礎だけになった住宅の跡が一面に広がっているという凄惨な光景でした。 その中で、1階が破壊されめちゃくちゃになっているものの、2階は形が残っているような建物がいくつか残っていました。破壊された1階に残った生活用品や玩具、所々に立っている慰霊碑などから、そこで生活していた方々がいらっしゃったことを実感させられ、胸が痛みました。
▼宮城県名取市 仮設住宅 シンプルな作りながら、デザイン性のある外装材や壁にイラストを施すなど、居住者の方の心労を 少しでも和らげようという工夫がされていました。 明るい挨拶をかけてくださる方々もおり、そこに住む方々の強さも感じることができました。
▼宮城県牡鹿郡女川町 町役場、女川港周辺 女川町の市街地は、仙台市の荒浜地区と同様、津波により上部構造が流され基礎だけが残った建物が一面に広がっているような状態でした。 また、港近くのRC造の2~4階建ての建物がそのままの状態で横倒しになっており、津波の力の大きさを実感しました。 海や山並みの美しい景色の中に、そうした非現実的な光景が広がっていました。
▼宮城県牡鹿郡女川町 仮設住宅 建築家の坂茂氏が中心となって建設された仮設住宅です。 輸送用コンテナを用い、3階建てとなっています。コンテナを用いることで工期を短縮し、狭い土地に多くの戸数が確保でき、優れた耐震性、断熱性、遮音性、耐火性能を実現できるという特徴があるようです[1]。白を基調としたアパートのような外観で、全体的に明るいデザインでした。 中央にはテントの張ってある広場があり、その下では元気に遊ぶ子供たちの姿を見ることができました。 WFP(国連世界食糧計画)の拠点などもありました。 女川町は仙台市などに比べ都市部から離れているため、今後も避難生活の支援が特に必要なのではと思われました。 [1]坂茂建築設計 「東日本大地震 津波 支援プロジェクト Disaster Relief Projects for EAST JAPAN EARTHQUAKE and TSUNAMI」 http://www.shigerubanarchitects.com/SBA_NEWS/SBA_van_p2.htm
▼福島県いわき市 仮設住宅 筑波大学の安藤邦廣教授が中心となって建設された、「板倉構法」を用いた仮設住宅です。 スギ厚板で床や壁、屋根を構成することで、耐久性、断熱性、防湿作用に優れた木の家を建てられるという特徴があるとのことです[2]。木の素材を見せ、温かみを感じる作りになっていました。 地域の復興の一つとして、地域材を使用し、地元の工務店により建設されていました。 [2]IORI Vol.2 特集記事「杉板倉の木造仮設住宅プロジェクト」 http://sub0000158161.ms.hmk-temp.com/IORIvol2.pdf
原発事故で自宅を退去させられ、仮設住宅に入居されている方にお話を伺うことができました。 この方は、ボランティアで仮設住宅周辺の除草もされていて、みんなが少しでも笑顔になればと、 ご本人も楽しみながら作業されている姿がとても印象的でした。 また、故郷である自宅に戻りたくても戻れないことに対する不安や、隣の音などプライバシー確保が 十分でない仮設住宅特有のご苦労を伺いました。 当面自宅に戻りたくても戻れない方々は、応急仮設住宅ではなく、居住スペースや プライバシー問題を改善した復興住宅への入居を希望されており、あらためて継続的な支援の必要性を感じました。 今回の調査では、震災による被害の大きさを目の当たりにし、我々に今できることをしていかなければならないと感じました。今後、被害を少しでも抑えるために、安全性の高い構造設計を広めていくことがインテグラルの務めであると考えています。 この記事によって現地の様子が少しでも伝われば幸いです。