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2013年8月30日


野沢正光氏のパッション

特定非営利活動法人木の建築フォラム(理事長:坂本 功東京大学名誉教授)が開催している講座の第4回として、 「中層・大規模木造の遮音及び温熱環境・設備設計」というテーマで野沢正光氏の話を聞く機会を得た。 この講座は、18時から90分×2コマという編成で行われるもので、昼間の仕事のあとに行くのは少々しんどい。 当日は3件の会議を梯子し結構疲れた状態で教室に入ったのだが、一瞬たりとも眠気を感じることはなかった。 というより感じる暇がなく、まさに野沢氏のパッションに圧倒された。 野沢正光氏といえば、雑誌等においても露出が多いので、写真を拝見することも多々あった。 風貌からしてもいかにも芸術家という方で、自由奔放な印象を勝手に抱いていた。 そこへ、やっぱりというべきか、黒のインナーにベージュのジャケットで現れた野沢氏。 講座冒頭では、「もう年だから」とか「パソコンの接続がうまくいかないな」とご不満を漏らしていたが、いつしかエンジン全開。 非常にエネルギッシュな語り口で、90分間をパワポなし、カンペなしで押し通された。 そもそもとして、住宅環境に関する歴史的な位置づけに触れるために、イギリスの産業革命にさかのぼった。 昭和の、黎明期のパッシブ環境の概念の走りの研究がどういうものであったか、 また、最近の実例としては、ドイツの先進例、国内での先進的な小学校減築例まで。 圧倒的な知識量とはこのことだ。こちらは、メモをとるので精いっぱい。講座が終わったときには大量のメモを前に消化不良ぎみ。 せっかくのチャンスなのに、質問をと言われても何を聞いていいのか整理がつかなかった。 温熱環境というと、断熱とか気密とか、はたまた、設備、一次エネルギー、HEMSといったテクニカルタームが並ぶことを予想していたが、野沢氏の講座にはこれらはかけらも出てこない。氏のように 歴史、自然エネルギーのとらえ方、実践、そして、哲学的な裏付けも含めた話をしてくれる先生は少ないのではないか。 昨今の省エネ関連の施策補助金の手厚いなかで、計算値を出すことが目的になっているかのような省エネ住宅設計であるが、今一度、文化としての住宅、哲学としての省エネを考えてみたいと考えさせられた。 日々の山積みの業務の中で、今歩んでいる道筋が確認できるような機会を得て、大変、満足した一夜であった。