スマートワトソン君温エアー(温湿度計)、温サーフェス(表面温度計)を用いた温熱調査のご紹介
3月、4月と言えば、各委員会や研究グループで成果報告会が賑やかになる季節ですね。
近年、高断熱高気密化された躯体を活かし、そこに高効率化したエアコンを採用するといった新しい空調方式が次々と開発されていますが、その一つであるYUCACOシステムを採用された木造住宅の温熱環境調査をやらせていただきました。さらに、その報告を研究会で発表させていただいてきました。その内容を一部、ご紹介させていただきます。
※YUCACOシステムとは、全館空調システムで、床下空間を利用して空調空気を吹き出すことで、床を暖めたり冷やしたりできます。詳細は、こちらのHPをご覧ください。
さて、今回の物件は地域6、密集地に建築された物件で、UA値=0.48を達成した、高気密高断熱住宅です。そこに、YUCACOシステムを搭載した木造住宅です。この住宅の断熱仕様は・・・、ともったいぶって説明するまでもなく、グラフをご覧ください!
まずは、図1の1段目をご覧ください。
どフラット!!!
これは全室の室温を測定した結果ですから、つまり、住宅内の室温のばらつきが、ほぼない!
しかも20℃以上で非常に安定していることが読み取れます。
さらに、驚いてしまうのが床の表面温度です。(図1の2段目のグラフ)
これは、弊社が開発した表面温度計で測定した暖房室の床温度です。この温度が、全く揺れることなく、20℃超えを示しています。
これらの状況を湿度(図1の3段目のグラフ)を加味した不快指数(図1の4段目のグラフ)で示してみると、ずばり、全室快適域に入っていました。空調による乾燥しすぎも心配ないことがわかりました。
ここまで見れば、いかに、この物件が温熱的に均質な空間を実現しているかがおわかりいただけるかと思います。
そして、さらに、図2をご覧ください。今回のYUCACOシステムを搭載した住宅(グラフ内の駒場E邸)について、同様の断熱仕様レベル(Q値2.7未満)で施工されている物件と比較した結果です。まず、図2左は工法の違いに着目してみました。各邸について、室温はオレンジの▲、床温度は青●で示してます。▲と●で結ばれた線分が温度差を示しています。このグラフから、基礎断熱工法を採用しているグループのほうが床下断熱工法グループより、室温・床温度共に高め(グラフ右上方向)に存在し、室温・床温度の温度差が小さいことがわかります。また、図2右は、図2左に対して、室温の快適温度範囲(19~23℃)で、かつ、好ましい温度差(米国暖房冷凍空調学会等は人間がはっきりと快適を意識できる温度差は2℃以内としてる)の領域を赤枠で示しています。これらより、比較した物件の中でも、当該住宅がより好ましい温熱環境を実現していることがわかりました。
インテグラルでは、ワイヤレス式温湿度計(商品名:温エアー)、表面温度計(商品名:温サーフェス)を活用して、多くの物件の計測をさせていただいておりますが、ここまで凄いグラフを見たのは初めてです。震撼させられたといっても過言ではありません。
ちなみに、この物件と対照的な測定結果を図4にてご覧ください。
H25年基準を満たした外皮性能のいい住宅といっても、大抵、このぐらいは、上下するものです。さらに、UA値が大きくなれば、もう少し、アップダウンが見て取れるようになります。
こうした温熱環境の実測調査サービスを通じて、設計時の意図どおりの温熱環境が実現できているか確認いただくことができます。そして、設計・施工へのフィードバックにつなげていただくことができるかと思います。はたまた、導入した良い設備にもかかわらず適正に運転されないことにより、居住者の温熱環境に対する満足度が低くなっている場合なども発見することもできます。
作ったモノの性能を実測して確かめるのは、工学的モノづくりにおいて基本であるように思います。しかも、温湿度や表面温度を測るという、大変簡易な方法で多くのことを確認できます。
今回は冬の調査事例をご紹介しましたが、断熱は夏の日射遮蔽、冷房効果の持続にも関わってきます。こうしたところを、次回はご紹介したいと思います。
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